世界には、その土地ならではの気候や暮らしに適応したユニークな住宅が存在します。
なかでも、チュニジアの「トログロダイト住宅」は、地中に築かれた驚きの住まいとして注目されています。
そこで今回は、トログロダイト住宅の特徴と日本住宅との違いについてご紹介します。
地中に掘られた伝統住宅「トログロダイト住宅」とは
チュニジア南部の村・マトマタでは、「トログロダイト住宅」と呼ばれる独特な住まいが古くから存在しています。
これは、地面を掘り下げて中央に円形の中庭をつくり、その壁面に部屋や通路をくり抜いて生活空間を構成するものです。外から見ても家の姿がほとんど確認できず、まるで地中に隠れているかのような構造が大きな特徴といえるでしょう。
こうした住まい方は、過酷な砂漠気候に対応するために生まれました。
地中に住むことで直射日光を避け、夏はひんやりと涼しく、冬は土の保温性によって暖かく保てます。エアコンを使わなくても快適に過ごせる環境が整っているのは、土や岩のもつ断熱性と遮熱性の高さによるものです。
また、外敵から身を守るための隠れ家的な構造でもあり、ベルベル人たちの生活の知恵が形となって現れています。
スター・ウォーズの撮影場所として世界的に有名に
この地中住居が世界的に知られるきっかけとなったのが、映画『スター・ウォーズ』です。
マトマタの「シディ・ドリス」というトログロダイト住宅が劇中の「タトゥイーン星」の撮影場所として使用され、今では世界中のファンが訪れる観光地となりました。
現在もバックパッカー向けの宿泊施設として営業しており、映画の雰囲気をそのままに体験できるスポットとして人気を集めています。
もともとは自然と共に暮らすための住まいであったこの住宅が、映画の撮影場所として注目を浴びるようになったことで、建築的な魅力や文化的価値が再認識されるようになりました。
伝統と現代が交差するこの場所は、建築に興味のある旅行者にとっても特別な魅力を放っています。
日本住宅との違いから見える文化と気候の工夫
トログロダイト住宅と日本住宅を比べると、その違いには気候と文化への適応の工夫が表れています。
まず構造の面では、日本の住まいは木造の地上建築が主流です。屋根や外壁がしっかりと見える設計で、開放感のある間取りや縁側、庭といった外とのつながりを大切にしています。
使用される建材も木材が中心で、湿気の多い日本の風土に合わせた通気性のよい構造が特徴です。
一方で、トログロダイト住宅は暑く乾燥した砂漠気候に合わせて、断熱性と遮熱性を最優先に設計されています。開口部も少なく、地中という環境そのものが断熱材の役割を果たしています。
日本では四季の移り変わりと共に自然を感じながら暮らすスタイルが根付いているのに対し、チュニジアの住宅は外気を遮断して過ごすという点で大きな対照を成しています。
このように、両国の住宅にはそれぞれの風土や文化が色濃く反映されており、住まいそのものが生活の知恵の結晶だといえるでしょう。
まとめ
チュニジアのトログロダイト住宅は、砂漠の厳しい環境に適応するための独創的な住まいです。
一方で、日本の住宅は四季や湿度への対応を重視し、自然との共生を大切にしています。
両者の違いから、気候や文化が住宅に与える影響の大きさを改めて感じられます。